住まいのコラム
復原と再生の東京駅
2018年02月12日
2012年10月、約5年間かけて行われてきたJR東日本「東京駅丸の内駅舎保存・復原工事」が終わり、生まれ変わった駅舎がその全貌を現わしました。最新鋭の高層ビルではなく、あえて創建当時の外観を忠実に再現した3階建ての堂々たる姿です。
新駅舎は、ただ100年前にタイムスリップしたのではなく伝統工法と最新技術とを駆使して、重要文化財にも指定された建築物としての完成度の高さと、免震工法をはじめとする安全性や環境性能をあわせもつ、機能美の結晶として生まれ変わりました。
壮大な保存・復原工事を実現するには、施主とゼネコン、職人、デザイナー、協力業者らの人知れぬ努力と苦労があったそうです。
1914年(大正3年)に開業した東京駅の設計者は辰野金吾氏。そのほか日銀本店や旅館なども設計された明治の建築家です。
当時の姿を忠実に再現し、外壁などの残された部分を「保存」しつつ、ドームなどの失われた部分を「復原」すると言った大工事に着手、「首都東京の風格ある都市空間を形成する」という強い使命感があったそうです。丸の内駅舎の保存をめぐっては旧国鉄時代からさまざまな意見や動きがあり、24階や35階建ての超高層ビルに建て替えようという案が検討された時期もあったそうですが、現代的な駅ビルにするのではなく、あえて「保存」と「復原」の道を選んだJR東日本。
東京駅の保存・復原工事には、創建当時と同じ材料や工法が可能な限り採用され、保存・復原の方向性は固まったものの、工事を進めるにあたって解決すべき課題が山積していました。まず、駅が創建された100年前の姿を正確に知る必要がありました。着工前の駅舎は、戦災で焼失したドームや屋根、内装などを1947年(昭和22年)に復興したものですが、その時点で3階建てから2階建てへと改修され、ドームも失われていました。
このため、古い図面や昔の写真類など、当時の姿を知る手がかりとなる資料を集められるだけ集め、読み解きを進め、建設時は杭打ちなど一部の作業を除き、ほとんどの工程が職人による手作業で進められていました。今回の工事では、できるだけ当時の工法を採用し復原していたようです。
詳しく下記をご覧下さい。
http://www.tokyostationcity.com/learning/station_building/
私も赤レンガと白い花崗岩を組み合わせ、屋根の上に塔やドームなどを載せた“辰野式”建築を間近で楽しんで見て来たいと思います。
東京駅をご利用の際は電車利用以外にも目を向けて見てはいかがでしょうか。
- [前の記事] 地盤のチェックはこうやってする
- [次の記事] 親の土地に家を建てる