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住まいのコラム

インスペクションは意味がないのか?

2021年06月10日

さいたま市南区、緑区、浦和区での土地探しから、居住後のアフターケア・リフォームまでワンストップのくさの工務店です。

 

 

 

 

宅建業法の改正とともに制度化された既存住宅状況調査(インスペクション)。
建物の調査業務なので、様々なインスペクションが乱立することが懸念されたのですが、既存住宅状況調査の登場により、不動産購入時のインスペクションが落ち着いた形となりました。
制度運用が開始されて数年経過しましたが、既存住宅状況調査が一般化されるどころか宅建業者から倦厭される存在になりつつあるのが現状です。
今回は不動産購入時になぜインスペクションが必要で、どのように判断すればよいかについてご説明いたします。

 

 

■既存住宅状況調査だけでは意味がない?!

 

「あの程度の調査では意味がない・安心できない」そんな声をあげる宅建業者がいます。
もし皆さんを担当している宅建業者がそんなことを言っていたら、その会社で取引を進めるのはやめた方が良いかもしれません。
制度のことを全く理解していないからです。

既存住宅状況調査は建物の劣化状況の確認が主な目的で、非破壊で足場を作らずに目視できる範囲が対象となります。
床下や小屋裏は点検口から覗く程度でお世辞にも詳細な調査とは言えません。
既存住宅状況調査を実施している=安心・安全な家とは言えません。

既存住宅状況調査を実施する目的を正しく捉えることができれば、調査だけでは意味がないことと、中古住宅の取引には欠かせない制度であることをご理解いただけると思います。

 

■これまでの調査業務の問題

 

既存住宅状況調査以外にも様々な調査業務があります。
住宅調査で有名なのは耐震診断です。主に建築士が現地調査を実施し、建物の耐震性を評価する業務です。
まずはこの耐震診断を例にこれまで建築業界が抱えてきた調査業務の問題について説明します。

調査業務の問題は事業者が行った調査結果をヘッジする仕組みがないという点に尽きます。
語弊を恐れず表現すると調査結果は単にその建築士の見解でしかないのです。

ある建築士が耐震診断を実施したと仮定します。
この時にこの建築士は重大な見落としをして、正しくない診断結果を依頼者に報告しました。
この時依頼者はこの建築士の見落としに気が付くことができるでしょうか。
仮に見落としに気が付いたとして、この建築士の見落としが過失であることを証明することができるでしょうか。
そもそも専門知識がないから建築士に調査を依頼するわけであって、調査業務に問題が生じた場合、消費者がかなり不利な立場になります。

このように消費者と事業者との2者間の契約行為は問題が生じると消費者が不利になりがちという問題があります。

話を既存住宅状況調査に戻すと、ある建築士が既存住宅状況調査を行ったとして、その判断が正しかろうと、誤っていようと、雨漏れなどの被害が生じた時に調査を行った建築士の過失を問うことは現実的ではない、つまりは「既存住宅状況調査は意味がない」という判断になるわけです。

 

 

■検査と保証が一体

 

少しおかしな表現をします。既存住宅状況調査の本質は建物調査ではありません。
既存住宅状況調査は既存住宅売買瑕疵保険とセットでようやく安心・安全を担保できる仕組みになります。
国交省はこのことを「検査と保証が一体」と表現しています。
既存住宅状況調査は既存住宅売買瑕疵保険の現況検査とほとんど調査内容が同じです。
つまり既存住宅状況調査で問題がなかったから安心ではなく、調査で問題ないということは瑕疵保険の検査基準に合格するということなので、瑕疵保険に加入できるから安心ということになります。

先ほど耐震診断で挙げた調査業務が抱える問題も瑕疵保険の制度で問題解決できます。

瑕疵保険に加入するには検査会社(もしくは瑕疵保険法人に登録のある建築士)が建物調査を行います。
その調査結果を元に瑕疵保険法人が検査が適切であるかのチェックを行う仕組みです。
つまり調査結果について調査を担当した建築士だけでなく瑕疵保険法人も責任を負うことになります。

瑕疵保険は建物の構造と雨水の侵入に対する保険制度です。
もし雨漏れなどが発生した場合は、その補修費用が瑕疵保険法人から支払われることになります。
問題解決のための資力が確保されているので、買主が泣き寝入りしなければならない状況を回避できるというわけです。

瑕疵保険は消費者保護の制度です。
中古住宅の取引で欠かせないと表現した理由もご理解いただけると思います。

 

 

■調査の目的は改修工事

 

実は「検査と保証が一体」では足りない要素があります。
そしてそれこそが不動産取引時に宅建業者がこの制度を積極的に扱わない理由になります。
足りない要素とは「改修工事」です。
中古住宅なのですべての住宅が瑕疵保険の検査基準に合格するわけではありません。
それどころか検査に合格しない(何かしらの劣化がある)可能性の方が高いのです。
悪いところは直せば良いだけなのですが、何かしら問題のある住宅(検査に不合格)は売りにくいという勝手な思い込みから誤った判断や誘導をしている宅建業者が多いようです。

大切なことなのでもう一度書きます。
中古住宅は改修工事を実施して購入するものなのです。

中古住宅なので何かしら問題があって当然です。
つまり中古住宅の購入時にはある程度の改修費用を想定しておく必要があるのです。
改修工事が不要な中古住宅がお得なわけではありません。

瑕疵保険の制度は「検査と保証と工事が一体」と捉えるべきです。

 

 

■中古住宅購入にはインスペクションが欠かせない

 

最後に話を整理します。
安心・安全な中古住宅取引には瑕疵保険が欠かせません。
瑕疵保険に加入するには検査基準に合格する必要があります。
つまり、中古住宅購入にはインスペクションが欠かせないという判断になるわけです。

冒頭で挙げた「あの程度の調査では意味がない・安心できない」と言っている宅建業者は制度の本質がわかっていないので取引を任せない方が良いと表現した理由がご理解いただけると思います。

既存住宅状況調査だけでは意味がありません。
ですが、中古住宅の取引には欠かせない仕組みなのです。

インスペクションや瑕疵保険の質問を行って、納得できる回答ができない事業者は中古の取引に慣れていない可能性が懸念されます。
こういった制度の話題は事業者選びの基準にもなりますので、中古住宅(特に戸建て)を検討されている方はまずは担当者にインスペクションや瑕疵保険について質問してみることをお勧めいたします。

 

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