住まいのコラム
国民年金の「納付期間45年へ延長」住宅購入を消費ではなく未来への貯金に代える方法
2022年12月05日
さいたま市での不動産の売却・購入から居住後のアフターケア・リフォームまでワンストップのくさの工務店です。
政府が国民年金の保険料の納付期間を20歳から65歳までの45年間に延長する検討に入った、というニュースが話題になっています。
少し前の「老後資金2000万円問題」の時もそうでしたが、超が付くほどの少子高齢社会となった日本では老後に対する備えに対して大きな関心が寄せられています。
年金制度の是非についてここで述べても仕方がないので不動産事業者の立場から老後についてご提案いたします。
持ち家の売却は今後の老後問題を考える上で欠かせない要素となります
「納付期間45年へ延長」のニュースで、年金制度が破綻しているというような論調の方も多いようですが、少なくとも年金だけに頼っていたら老後の生活がままならない、というのは共通の認識と言っても良いでしょう。
老後を普通に生活するにはまとまった資金を収入があるうちに貯めておく必要があります。
不景気だしそんなお金を貯める余裕なんてないよ…そのような意見が多くなるのですが、不動産事業者目線で捉えるとちょっと待った!と言いたくなることがあります。
老後関係のニュースが話題になった時、年金受給者のインタビューが報道されたりするのですが、「年金だけでは生活が苦しい」と言いながら、持ち家に住んでいると思われる方が結構います。
こういうことを書くと「年寄りになったら家まで奪われるのか!」とお怒りになる方もいらっしゃるかもしれませんが、家がまとまった金額で売れたとしたら、今のカツカツな生活を改善することもできるでしょう。
住宅や生命保険のようにご本人が亡くなるまで動かせない資産があります。
平均余命が今より短かった時期や経済的に余裕のある方はそれでもいいのですが、限られた年金でやりくりしながら、自宅をそのまま放置するというのはもったいないと感じてしまいます。
しかし貯金を切り崩し、いよいよ先が見えなくなって住宅の売却が決断できるかというと現実的とは言えません。
高齢になると判断が鈍るというような話ではなく、単純に引っ越しに耐えられる体力がなくなってしまうからです。
「家は一生で一回の買い物」「終の棲家」「実家という概念」といったかつての住宅に対する常識に縛られ過ぎて、自らの選択肢を狭めているようにしか見えないのです。
これからの日本では子供が独立したら子育てのための家は売却する、という将来の売却を想定した住宅購入が必要だと思います。
家に対する想いは贅沢と判断される時代に
老後の住宅資産の選択肢は限られています。
「そのままにする」「売却する」「賃貸にする」の3つです。
現在もっとも考えられる「そのままにする」ですが、この選択肢を選ぶことができる人には条件があります。
・年金収入だけで生活できる貯金がある
・いざとなったら高齢者向け施設に入居できる貯金がある、もしくは、介護できる家族がいる
・少なくとも平均余命くらいまで建物性能を維持するためのリフォーム資金を用意できる
いずれもお金の話です。
もの凄く冷たい言い方をすると、「住み慣れた我が家」も「家族が過ごした想い出の家」も「孫や子供が帰省するための実家」も、必要な老後資金が用意できている方のみが享受できる価値と言えます。
老後に必要な資金が不足すると、「売却する」か「賃貸にする」か、何らかの方法で資金化しないと、前述のように年金だけではカツカツで…という生活を余儀なくされることとなります。
場合によっては自分の介護費用を子供に負担してもらわなければならなくなる事態も想定されます。
ちなみに住宅購入の際にメディアが「購入VS賃貸」というような煽る記事をよく報道するのですが、賃貸派の方は老後に資金化できる住宅資産を持たないので、別の方法で老後資金を貯めておかなければなりません。
間違っても住宅ローン返済額相当の家賃を消費することはできません。(経済力のある方は別です)住居費を抑え、その分老後の貯蓄へ回す必要があります。
住宅ローンの返済が結果的に将来の貯金になるということ
賃貸VS購入の話に触れたのでもう少し掘り下げます。
仮に3000万円の家を購入したとします。
フラット35の10月の金利で計算すると毎月の返済額は88,656円です。
※返済期間35年、金利引き下げなし、団信付保なし、元利均等返済、2022年10月の金利で計算
35歳の時に上記の条件で購入し、ローン完済後の70歳で売却すると想定します。
この3000万円の家が35年住んだ後に3000万円で売れるとするのはあまりに楽観的な見方と言えます。
従って住宅資産は考えない、0とするというのが賃貸派の意見です。
しかし実際にはそうはなりません。(少なくとも平成になってからはそんなことは起きていません)買い手が付くなら値段が付きます。
それが元の半額なのか、1/3なのか、2/3なのかは購入した家によります。
ここでは半額の1500万円で売却できると想定したとします。
この家を買った人は老後に必要と言われた2000万円まであと500万円貯金すればよいだけということになります。
70歳の時点でご自身で設定した老後資金を確保できれば家を売る必要はありません。
何かが上手くいかなくて老後資金がショートする場合は家を売って補填する必要があります。
半額で売れるということは、ローン返済額のざっくり半分を結果的に貯金したことと同義です。
※もちろん金利負担分や住宅所有にかかる諸経費など賃貸では発生しない費用もありますので半分貯金は言い過ぎかもしれませんが、この記事ではあくまで例なので詳細は割愛いたします。
ただ、話題になった老後資金2000万円のシミュレーションには、賃貸だった場合の住居費も含まれていたので、売らずにそのまま住む場合は、住居費分賃貸派よりも生活が楽になります。
対して賃貸派です。
収入やエリア、家族構成は前述の購入派と同じ程度と想定します。
およそ9万円の家賃や賃貸のみに発生する費用だけなので購入するより負担が軽いというのが賃貸派の意見です。
毎月9万円の賃料を負担する人が70歳の時点で購入派の人と同じ状況(半額で売却できた状況)になるためには、35年間で1500万円ほど貯金しなければなりません。
単純に計算すると35,714円/月です。言い換えると家賃と貯金額をあわせて毎月124,370円かかる生活をしないと、70歳の時点で1500万円の資産が得られないのです。
約9万円→約12万円は難しいですね。
従って、賃貸派の方は9万円の家賃ではなく6万円程度の家賃に抑えるのが老後を見据えた現実的なプランになるというのが私の意見です。
ローンの返済額を念頭に9万円の家賃を許容するということは、購入派よりも貯蓄分3万円ほど贅沢をしているという考え方もできます。
老後を心配するなら住宅を購入した方が良い、賃貸は購入よりも贅沢な選択になりやすいということがご理解いただけたでしょうか。
将来苦労するかどうかは家の買い方で変わります
先の文章だけだと70歳の時に必要な金額で売れなかったら破綻するじゃないか、というご意見が賃貸派の方から聞こえてきそうです。
実際その通りです。
老後に不安のある方は、老後に売却しても購入金額の半分、できれば2/3くらいの価格で売れる家を選ばなければなりません。
将来のことは誰にもわかりません。
ただ、将来の売却時に価値を大幅に下げてしまう家や、そもそも買い手がいなくて売るのに苦労するエリアを予測することはそんなに難しくはありません。
住宅の資産価値は立地が全てです。
将来に渡って人が集まり続ける街の、最寄り駅から近いエリアを選択すれば、賃貸派が言うような価値が読めないから0円、なんて極端な判断をしなくて済みます。
逆に資産価値にあまり反映されない内装にお金をかけたり、最寄り駅まで車やバスでないとアクセスできないエリア、人口減少が問題視されている街などを選んでしまうと、将来の売却は苦労することが簡単に予想できます。
老後を心配するなら住宅を購入した方が良い、と書きましたが、将来苦労しないためには、今の満足だけを重視せずに、予算内でなるべく資産価値の高い物件を選ぶことが重要だと言えます。
経済状況が不安定な中、将来に対する不安を抱える人も多いと思います。
住宅資産、とりわけ住居費に対する考え方を改めるだけで展望が開けることは少なくありません。
キーワードは「貯金になる家」です。
快適さや満足度も重要ですが、住宅購入で大切なのは資産価値ということについて、改めてご認識いただけると幸いです。
~人生に愛すべき住まいを~
さいたま市の不動産の売却・購入は、くさの工務店にご相談ください。
- [前の記事] 不動産購入前に知っておきたい『離婚』後の不動産について
- [次の記事] 災害の備えとしての「思い出の保存」について