住まいのコラム
人口減少時代の住宅購入 20年後に買ってくれる人がいるか?という視点
2023年03月08日
さいたま市での不動産の売却・購入から居住後のアフターケア・リフォームまでワンストップのくさの工務店です。
岸田総理が年初に異次元の少子化対策に取り組むという表明をしたり、東京都が子育て支援策としての現金給付を表明するなど、2023年は年始から少子化対策について騒がしくなっています。
日本の少子高齢化は深刻で、これまで政府が予想していたよりも出生率の落ち込みが進行していることが要因の一つですが、多くの方のご意見のように、今の延長線上には痛みのない少子化対策というのは実現しないのではと思います。
これから家を買う方はご自身の都合だけでなく、10年後・20年後を見据えて判断する必要があるというご説明をいたします。
□テレワークだから郊外を許容しても良いのでしょうか
2022年12月14日に政府がデジタル田園都市国家構想の総合戦略案を発表しました。重要目標に「27年度に東京圏から地方への移住者を年間1万人」「地方での起業を27年度に約千件」などを掲げています。
新型コロナの影響からテレワークが浸透し、私たちの働き方も大きな変革を迎えています。
完全なリモートワークとまではいかないにしても、会社へ出勤する頻度が下がれば、多少都心から離れても問題ない、そう考える人も少なくないと思います。中には地方への移住を検討している人もいるかもしれません。
住宅購入において仕事(職場へのアクセス)は重要な検討材料ですが、それだけで選択するのは間違いです。
住宅を購入するということは、将来いずれかのタイミングで売却をするということです。
長期間住宅ローンに縛られてローンの返済が終わった頃には二束三文というのは、住宅に資産性が乏しいからだけでなく、購入時に売却のことを想定していないことが大きな要因だと言えます。
地方移住のニュースも要注意です。
前述の通り国は東京圏から地方への移住を推進しているので、地方移住が盛り上がっています、というようなニュースを目にすることが多くなりました。
先日は、三重県四日市市が人気で、移住しようにも空き家が足りないというようなニュースが出ていました。
自治体の制度で無料もしくは格安で家を借りることができるのならまだ良いのですが、格安の物件だからといって安易に購入してしまうのは良くありません。
不動産市場で取引が成立しないために空き家バンクなどの制度に頼らないといけない物件であり、旧耐震など住宅性能が不安な物件も少なくありません。
こういった物件を購入してしまうと、一度購入したが最後、売りたくても売ることができない状況に陥る危険があります。
□今より人が減ることを想定して街選びをする
政府が対策に乗り出すほど日本の人口問題は深刻な状況です。これから家を買う方は、人が減ることを前提に検討する必要があります。
人口が減ると商業施設が撤退します。地方だと郊外型の大型ショッピングモール付近に住宅地が形成されることが多いのですが、ショッピングモールがなくなれば何もない不便な立地でしかありません。
今では生活に欠かせなくなったコンビニエンスストアも人口が減れば当然撤退してしまいます。
インターネットがあれば買い物は大丈夫という方がいらっしゃいますが、配達業者も効率が悪くなれば当然撤退します。今は送料無料とか、安めの配送料が設定されていることがありますが、遠くない将来、過疎エリアの送料が高額になることが容易に想像できます。
商業施設だけではありません。病院も学校も人がいないと成り立ちません。公共交通機関も廃止されます。
車があるから駅から遠くても大丈夫とよく聞きますが、言い換えるとそういった地域は車がないと生活が成り立たない地域であり、車が運転できなくなると生活が困難になる地域と言えます。
これから家を買う方は人口データや自治体の財政状況なども踏まえて、日本全体としては人口減少だけれども、その中でも人口が維持できているもしくは減少幅が少ない街を吟味する必要があると思います。
□人口問題は一朝一夕には解決できません
皆さんは少子化のニュースをご覧になってどのようにお考えでしょうか。
若い世代が子供を産み、育てやすい社会を構築しなければ、とニュースでコメンテーターが発言しますが、実現可能性の高い対策が実行されるとは思えません。
年初の岸田総理の発言でも、子育て支援のための財源をどうするか?という意見がたくさん出ていました。
子育てがひと段落した世代からすると安易な給付対策では不公平という印象が拭えないのが実情ではないでしょうか。
経済が発展すると出生率が落ちるというのは世界規模でデータが示している通りであり、人口問題が近い将来改善に向かうというのは楽観過ぎる判断で、ここから先も人口が減り続けることを想定した方が現実的な判断と言えます。
仮に2023年にベビーブームが発生し、一気に出生数が伸びたとしても、今年産まれた子供が家を買うのは30年~35年後になります。
2022年までの出生数は結果が出てしまっているので、これから家を買う方が家を売らなければならなくなった時は、今よりずっと家を買う方が減った社会であることを真剣に検討するべきです。
自然に囲まれた住環境に憧れていたと安易にエリアを選択するべきではないですし、都市部と違い土地値が安いからと言って新築・リフォームに高額な費用をかけるべきではありません。
住宅購入時の「自分勝手な理由」は、将来家を売らなければならなくなった際の「足枷」となります。
自分の都合や今だけに注目するのではなく、20年後に買ってくれる人がいるか?という視点が大切であることを念頭に物件探しをすることをお勧めいたします。
~人生に愛すべき住まいを~
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