住まいのコラム
親と子「ペアローン」の仕組みと注意点とは?
2018年01月28日
二世帯住宅の資金計画
人生100年時代を見据え、働き方だけでなく、暮らし方や住まい方も長期視点で考える時代となっている。子育てしながら働く、老親の世話をしながら働く、孫の面倒を見ながら働く、というライフスタイルを想定すれば、親との同居や近居は効率的で安心で有効な選択肢と言えよう。かつての日本で主流であった二世帯や三世帯でのライフスタイルが再び増加し、同時に1.5世帯や2.5世帯といった夫婦世帯と単身の成人世帯が同居する新しい住まい方も増えていくであろう。当コラムでは、先ずは親子の資金計画を考えてみたい。
親子で住まう二世帯住宅を購入または新築する際の資金計画では、誰が頭金を出し、誰が住宅ローンを借入れるかがポイントとなる。組み合わせは、以下の3パターンだ。
1) 親または子の一方が、頭金と住宅ローンの全額を負担する。(全額を現金払いする場合を含む)
2) 親または子が頭金を出し、一方の子または親が住宅ローンを借入れる
3) 頭金と住宅ローンを親子がともに負担する
2)と3)で住宅ローンを借入れる場合は、年齢や年収など金融機関の審査に合格する必要がある。親が高齢であったり、子どもが低収入であったりすれば、二世帯住宅を取得するのに必要な住宅ローンを借入れることができないかもしれない。親子で借入れることができれば、借入額を増額することが可能だ。
親と子の住宅ローン借入プラン
親子で住宅ローンを借入れる方法は、主に3つだ。
1) 収入合算
2) ペアローン
3) 親子リレー返済
上記のうち親の住宅ローンを子が承継する仕組みの「親子リレー返済」については、『「親子リレー返済」の要件と注意点、返済プランニングのポイントは!?』にて要点を解説、紹介しているので参照頂きたい。
【収入合算】とは、住宅ローンを借入れる際に親の収入と子の収入を合算して審査し、借入額を試算する仕組みだ。住宅ローンの利用にあたっては年収要件を満たすことが必須だが、若年で収入が少ない子にとっては心強い。なお、親と子が逆転し、親が契約する住宅ローンに子が収入合算者となることも可能だ。
【ペアローン】とは、親と子がそれぞれ住宅ローンを契約し、返済していくパターンを言う。住宅ローンの契約は収入合算が1本であるのに対し、ペアローンは親と子がそれぞれに契約するため計2本となる。
両者とも年収要件や年齢要件等から子や親が単独で契約する住宅ローンだけでは希望の借入額に満たない場合に効果的だ。【ペアローン】からそのメリットや注意点を見ていこう。
「ペアローン」の仕組み
「収入合算」との違いを考えるにあたって注意したいのは、誰が住宅ローンの契約者か、という点である。「ペアローン」は、親と子がそれぞれ住宅ローンを契約し、返済していくこととなる。親と子は同居の親族である必要があり、それぞれの住宅ローン契約に対して「連帯保証人」となる。「連帯保証人」とは、住宅ローンという債務を負った契約者(例えば子)の保証人という立場だ。子が返済できなくなれば、親が債務(住宅ローン)を弁済しなければならない。
親も子も個々の住宅ローン契約となるためそれぞれが住宅ローンの審査に合格する必要があるが、それぞれが団体信用生命保険に加入し、住宅ローン控除の適用を受けることができる。
「ペアローン」のメリットと注意点
メリットは、2本の住宅ローン契約となるため、単独で借入れる場合よりも借入可能額を増額できること。必要以上に借入れてしまう可能性もあり注意が必要だ。また、契約が2本となるため、手数料等のコストが増えることにも留意したい。注意しておきたいのは、団体信用生命保険と住宅ローン控除についてである。「団体信用生命保険」は、住宅ローンの契約者が死亡するなどの場合に住宅ローンの残債が保険金によって相殺される保険だが、親が亡くなった場合は親の残債が、子が亡くなった場合は子の残債がゼロとなる。だが、もう一方の住宅ローンは別契約のため返済は継続する。万が一の場合を想定して借入額と返済額は慎重にプランニングしておきたい。
「住宅ローン控除」は、年末の借入残高の1%(上限額あり)が所得税と住民税から10年間にわたり控除される税制特例だが、こちらも親と子のそれぞれに適用される。親も子も収入があり所得税を支払っているようなケースでは減税効果を期待できる。住宅ローン控除にも返済期間や収入等の要件があるため適用の可否を事前に調べておこう。なお控除は、納めている税金以上には戻ってこない。
例えば、年末の住宅ローン残高の1%が18万円だったとしても、納税額が10万円であれば控除額は10万円である。親子の住宅ローンの負担割合を決める際は、所得税額も参考にしても良いだろう。だが、親の収入と納税額が高いからと、ただそれだけで親の負担を多くすることは考えものだ。当特例では、途中で親が仕事をリタイアして所得税がゼロとなった場合に、親の控除枠を子に付け替えることはできない。
「ペアローン」と「収入合算」の相違点
両者はいずれも、住宅ローンの借入額を増額する際の有効な手段である。「ペアローン」が親子それぞれの契約になるのに対し、「収入合算」は主たる債務者の住宅ローン契約に、もう一方が収入合算者として関わることとなる。収入合算者は親、子、配偶者など同居の親族であることのほか、申込時年齢や合算可能額についても要件がある。
収入合算者の位置付けには「連帯債務者」と「連帯保証人」とがあり、金融機関によって異なる。「連帯債務者」は、主たる債務者と同じ義務と責任を負うため、連帯保証人のように「主たる債務者が返済不能となったら弁済する」という順位がない。だが、連帯保証人は所有権の持ち分に応じて住宅ローン控除の適用が受けられる。ペアローンの場合も併せて、団体信用生命保険と住宅ローン控除の扱いの差異について下表で整理してみた。
親子での住宅ローンの借入れは、子だけ親だけでの場合よりも借入可能額が増額する。高額な二世帯住宅の取得には心強い方法だ。その一方で、親子とは言え年齢も年収も異なる二者での借り入れは慎重に行いたい。働き方が変わって収入が減少したり転勤があったり、子どもが増えるなど、同居人の増減があるかもしれない。様々な変動要因に備えた堅実で安心の資金計画、返済計画を家族皆で話し合っておこう。なお、ペアローン、収入合算は夫婦で購入する場合も利用可能だ。
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